ニュースの概要
ショーケースは、自社の本人確認サービス「ProTech ID Checker」が、トレミールのモバイル機器レンタルサービスに採用されたと発表した。このサービスは、銀行や証券の口座開設、携帯電話の契約、古物の買い取り、会員登録など、対面と非対面の両方の場面で使われている。発表を受けて同社の株価はストップ高となり、市場の関心の高さがうかがえる。スマートフォンやタブレットを貸し出す事業では、機器が戻らないリスクがあるため、申込者が本当にその人かどうかを確かめる工程が欠かせない。今回の採用は、本人確認が金融の枠を超え、貸し借りを伴う幅広い取引の入口になりつつあることを示している。
引用元: ショーケースの本人確認サービス、モバイル機器レンタルに採用(Kabutan)
分析・見解
金融の外へ広がる本人確認という需要
本人確認は長いあいだ、銀行や証券のように法律で義務づけられた分野の話だった。ところが今回の採用先はモバイル機器のレンタルである。法律で求められていなくても、貸した物が戻らない損失を避けるために、事業者が自発的に確認を強める流れが見えてくる。
古物の買い取りも同じ構図だ。盗品が持ち込まれるリスクを抑えたい事業者が、確認の仕組みを自ら取り入れている。需要の源は規制だけでなく、事業者自身の損失回避へと広がっている。
申込画面で完結する非対面の確認が売上を左右する
レンタルは、ネットで申し込み、機器が宅配で届ける形が基本である。店頭で免許証を見せる方法は使えない。そこで、スマートフォンで本人確認書類と顔を撮影し、機械で照合する仕組み(=オンラインで行う本人確認、いわゆるeKYC)が前提になる。
ここで効いてくるのが速さだ。審査の待ち時間が長いと、利用者は申込の途中で離れてしまう。確認の精度が低ければ不正を通し、厳しすぎれば正しい客まで断る。つまり本人確認は、不正対策であると同時に、売上を左右する販売の一部でもある。
ストップ高の熱と、数字で確かめるべき点
ストップ高は期待の大きさを表すが、一件の採用が業績をどれだけ押し上げるかは別の問題である。本人確認サービスは、確認一件ごとの従量課金や月額料金で収益が積み上がる形が多い。だから大切なのは、採用社数の多さよりも、採用先での処理件数がどこまで伸びるかである。
この点は発表文だけでは分からない。今後の決算で、利用件数や単価がどう開示されるかを見て初めて、今回の採用の重みが測れる。話題性と収益の実力は分けて眺めたい。
現場ごとの手口を知る専門企業が強い理由
本人確認は一見、どこでも使える汎用の部品に見える。だが実際には、現場ごとに不正の手口が違う。携帯契約では他人名義の端末入手が狙われ、古物では盗品の換金が狙われ、レンタルでは借りたまま連絡を絶つ行為が狙われる。
ここに、特定分野に絞った企業の強みがある。業種ごとの失敗事例を積み重ね、それを判定の仕組みに反映できる会社は、後発の大手でもすぐには真似しにくい。幅広い場面に対応しているという今回の説明は、そうした現場知識の蓄積を示すものと読める。大きな市場で勝つのではなく、手口の細部を深く知ることで選ばれる。これは世界で戦うニッチ企業に共通する勝ち方でもある。
ビジネスへの影響
貸し借りを伴う事業は入口の審査から見直す
レンタル、リース、サブスクリプション、中古品の売買など、物を先に渡す事業は、入口の審査が損益に直結する。まずは過去一年の未返却や連絡不能の件数を数え、被害額を把握したい。損失が見えれば、確認の仕組みにいくらまで投じてよいかが決まる。
導入するときは、不正を止める力だけで選ばない。申込画面での離脱率がどう変わるか、審査にかかる時間がどれだけ短くなるかを、試験運用で比べるとよい。厳しくしすぎて客を逃す失敗は、数字を取らないと気づきにくい。
個人情報の扱いと提携先の見極め
本人確認では、顔写真や書類の画像といった重い個人情報を預かる。保管する期間、保管する場所、漏えいしたときの責任の分担を、契約の段階で文書にしておく必要がある。安さだけで選び、後から対応に追われる例は少なくない。
専門企業との連携や資本提携を考える視点
中堅企業が自社の弱い領域を補うとき、自前で作るより、特定分野に強い専門企業と組む方が早いことが多い。見るべきは売上の大きさよりも、現場の失敗事例をどれだけ持っているか、採用先が増えるたびに製品が賢くなる仕組みがあるかである。
後継者問題を抱える企業にとっても、同じ視点は役立つ。自社が持つ現場知識こそが買い手に評価される資産だと気づけば、事業の見せ方や譲渡の準備も変わってくる。